権力者も普通に働く人にも示唆に富んだ本~「新聞記者」

職場や社会的地位につくには、ついたひとには、自分の耳の痛い話をちゃんと聞くようにしなければならない、懐が大きくないといけないこと、人としての大きさ器の大きさ、芯の強さ、そんなことを感じさせてくれる本です。

また仕事をする上で、みんな、新聞記者のように社会の中で責任を果たしていて、だれもが逆風の中でも孤独でも、やらないといけないと筋を通す心の強さを持つことの大切さも感じさせてくれます。強烈な本でした。


東京東京新聞の望月さんが書かれた、普段の取材の様子や日々思ったことが書かれた、とても読み応えのある本です。

望月さんといえば以前に出された「新聞記者」が印象的です。映画の原案にもなりましたよね。その新書の中でも、当時の菅官房長官に何度も質問を試みては挫折を繰り返し、それでも怯まず質問を繰り返していた姿、そしてそれを冷ややかに、そして抵抗勢力として接していた番記者の人たちの様子との対比がとても鮮明でした。

ごくごく普通の記者として普通の行為をしているのに、さも抵抗勢力、じゃまものとして扱われたりするという、メディアのおかしな性質が今回も記されています。
権力者がそばにいる方が偉く、その方がいい情報がもらえる、その方が出世できるといった色んな思惑があるっていうメディアの事情がこんなところに影響していて、普通の取材がなかなかできないということを示した本でした。


今回の本でも同じようにメディア業界の非常識って言うんでしょうか、「抱きつき戦法」と言うか、いわば権力者に擦り寄って、情報をもらっていくという、いわば持ちつ持たれつの関係があるからこそ、それが長年培われてきたから今があって、そのうち既得権益を脅かすような普通の感覚は排除されるという、メディアと権力との関係が記録されています。
それおかしいやんということがたくさん出てきますけれども、そのおかしい、が普通に淡々と書かれているところが、望月さんは芯の強い人だなと思わせてくれます。

普通の思いで皆が仕事ができたらいいんでしょうけれども、なかなか思惑や大人の事情もあってできないでしょう。けれどもそこちゃんとやり遂げられるって言う事が、この人の強さだと思います。

という意味ではマスコミ業界について書かれた内容ではありますが、生きるのに迷った人との心の支えになる本かもしれません。

スリランカ人の女性が入管施設で亡くなった件に関しても徹底的に追いかけていて、その姿勢にメディアとしての役割を感じます。

ご自身はお子さんもいらっしゃり、家庭と仕事の両立されながらの女性で、本当に頭が下がります。いまだに新聞業界という長時間労働が当たり前という業界の中で、ちゃんと自分の立ち位置姿勢を維持しながら仕事をされているところは大変立派ですし、それを支える東京新聞という組織に懐が深く本当に良いと思います。もちろん本人の努力があってのことだと思います。そんな周りをも動かすような望月さんのパワーと熱量と持って既得権益のために戦っていこうというような姿勢にただただ、頭をガツンと殴られたように思いしました。

ぜひメディア業界に入ろうという方にとっては読んで頂きたい本です。
そうじゃなくても普段、ニュースがどんな形で私たちの手元に届いているのか、そのワケは、ニュースの現場がどうなっているのか、ということを知るうえでもとても参考になると思います。

ジェンダーの話とか記者会見の話、政府の記者会見の様子なんか特にそうですよね。
都合の悪い記者はできるだけ追い出そうという思惑として、同調主義者が権力を取材する、自分たちにとって都合の悪い人は切り離そうという権力側に立った記者たち、そんな人たちの逆風の中で争っていくことに大変さと辛さ、その中で取材が行われニュースが届けられているという、私たちのメディアの構図が分かってきます。

小泉元首相が、メディアと関係に関して、メディアが権力を批判するものだとしてある程度距離を取っていた、そしてメディアからの批判を受け入れ、その上で受け入れた上で包容力をもって対応していたっていう話も書かれていました。
並行して朝夕とメディアに対する取材対応をちゃんとしていた後、メディアに対応することによってメディアを上手く逆に引きつけていたのかもしれません、という指摘でした。

ただそういう懐の深さがあったという指摘がある一方で、安倍政権、菅政権のように、自分たちに敵対するメディアに対しては明らかに距離をとる、拳を振り上げ叩こうとする姿勢があると言う、受け取る側から見ると、時の権力者の器の大きさ、社会との接点、その設定の最初の設定でもあるメディアとの付き合い方という意味では、あまりに小ささを感じてしまいます。

逆に言うと記者に対してちゃんと対応するそれを包み込んでしまうぐらいの大きさがあれば、しつこく反発する人たちも不信感が募ることもないでしょうし、所詮権力のチェック機能であるということを認めた上で、チェック機能がちゃんと果たせるようにその存在を認めてこその権力者なんだろうなって言うと思います。

なので自分の耳の痛い話をちゃんと聞くようにしなければなということを逆にこの本を読みながら感じました。人としての大きさ器の大きさ、芯の強さ、そんなことを感じさせてくれる本です。
大人になることでも懐の深さを権力者は持つべきであり、仕事をする上で、みんな、新聞記者のように社会の中で責任を果たしていて、だれもが逆風の中でも孤独でも、やらないといけないという、その心の強さを持つことの大切さ、ということがもう読みながら感じました。

業界を目指す学生の人たちや業界に入っていま、業界の常識の中にどっぷりつかっている人達には初心を思い出すためにも読んでもらいたい本だと思います。 

 

 

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